それから二人は入浴を終えるとキッチンへ向かった。

オーレリアンが冷蔵庫にしまっておいたモンブランを出してテーブルに置く。

「……いただきます」

手を合わせてからフォークを持ち、ケーキをパクリ。

フェオドールは甘いマロンクリームを口に含んだ瞬間、欲しいものを手に入れた子供のように目を輝かせた。

「………おいしい」

落ち着いた声だったが、これで内心は狂喜乱舞している。

わかりにくい喜び方だが小鳥にはちゃんと伝わったようだ。

「良かったです!オーレリアンさんにフェオさんの好み聞いて、頑張った甲斐がありました」

「そうか……」

「あの…フェオさん」

「ん…?」

「どうしてあの時…いらないって、言ったんですか…?」

今、口元を緩ませながらモンブランを美味しそうに食べているフェオドール。

本当は大好物なのになぜ一度目は突き返したのか。

「……」

フェオドールはモグモグ動かしていた口と、手を止めた。


「……カッコ悪い」


「え…?」


「単なる…嫉妬だ」


フゥと軽く息を吐いて、彼は気恥ずかしげに視線をさ迷わせる。

「君とオーレリアンが親しげにしていたのが…気に入らなかったから……その………すまなかった」

「え……それ、だけ……ですか?」

「他に理由が?」

「あっ、いえ!なければ良いんですっ」

てっきり、酔った勢いで馬鹿呼ばわりしてしまったことを怒られると思っていた小鳥は、ホッと胸を撫で下ろした。

そして気づく。


(フェオさんも嫉妬、するんだ…)


あまり激しい感情を表に出さない人だから、注意していないと見逃してしまう。

もっと彼を理解したい。

小鳥は再びモンブランを口に運び始めたフェオドールを見つめてそう思った。