フェオドールがその場所から店内の方へ戻ったのは一時間近く経ってからだった。

柩に腰掛けてタバコを吸う彼女を残し、先に出る。

いつものこと。

ここまではそうだった。

しかし、勘定をするためセルトがいるカウンターに近寄ったその時。


「おい…大丈夫か?」

「だーいじょーぶですよ?おーれりあんさん」

「いや、ダメだろ!もう飲むな馬鹿!」

聞き知った声がフェオドールの耳に飛び込んで来た。

「……っ!?」

バッと顔を上げ、声の方を見る。

するとカウンター席で楽しげに会話をしている小鳥とオーレリアンを発見してしまった。

「どうして……小鳥が、ここに…!?」

思わず心の声が漏れる。

驚いて弟とフィアンセを凝視していると、カウンターの内側からセルトが声を掛けてきた。

「フェオ、支払いですか?」

「あ…ああ……。セルト、あの二人はいつ来た?」

「え?ああ、貴方が来店してすぐですよ」

ということは、見られていたのかもしれない。

フェオドールは嫌な予感に焦りを覚えた。

硬くなる表情とは裏腹に胸の鼓動が騒がしくなる。