そういうものなのか、と納得しているとフェオドールが穏やかな声でこう言った。
「セルトはここの店主で俺の友人なんだ。悪い奴じゃないから安心していい」
暗い裏通りで店を出している彼が誤解されないようにとの配慮だろうか。
フェオドールは小鳥を気遣いつつ友人のフォローもした。
(フェオさんの友達か…。セルトさんて、とっても人が好さそう)
ほんわかしたオーラを出しているセルトの顔を眺めていると…。
「お待たせしました」
小鳥の目の前にスッとグラスが置かれる。
「オレンジジュースです。どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。ところで、お嬢さんのお名前はなんですか?」
「小鳥です」
「小鳥さんですね。私はセルトといいます。いつでも居酒屋狂詩曲(ラプソディー)に遊びに来て下さいね。お酒が飲めなくても大歓迎ですから」
ニコニコしているセルトに釣られ、小鳥も笑みを返していると、ミロスラフが呆れたような声を出した。
「そういうの、なんか口説いてるみたいだよ?ほらほらー、フェオがぶすくれちゃったじゃん」
「……別に、ぶすくれてない」