家路につきながら楽しくお喋り。

フェオドールがやっと言葉を覚え始めた幼い息子と、しっかり者の母親になった小鳥を思い出し口元を緩ませていると。


「パパ~」


前方から舌足らずな可愛らしい声が聞こえた。

見れば、子供を抱っこしている女性の姿が。

「小鳥!ノエル!」

フェオドールは慌ててその二人に駆け寄った。

「二人だけで外へ出るなんて…危ない。やめてくれ」

「ごめんなさい。迎えに来たんです。なかなか帰って来ないから…」

「すまない…。もう今日は家にいるから」

ふわふわしたノエルの茶髪を撫でてやりながらフェオドールは小鳥の額に口付ける。

「フィアンセちゃんは不安だったんだよね。わかってる?彼女、君以外に頼れる人いないんだよ?」

さらっと指摘された事実はフェオドールだってよくわかっているつもりだ。

だからこそ小鳥を安心させたくて、守りたくて、毎日寝る時は同じ柩に、起きている時間はなるべく隣にいるようにしている。


(一人の時間が心地好かった俺が……何の苦もなく他者との時間を共有できているなんて…奇跡だな)


その奇跡を手放すつもりはない。

フェオドールは今日も薔薇を愛でるように大好きな妻へと愛を注ぐ。