「俺は……行きたい」


彼の瞳が揺れる。

「いずれは向こうで演奏活動をしたいと思っていたんだ。ただ、タイミングが掴めなかっただけで……ずっと興味があった」

昔、ヴァイオリン一つ持って異国を旅をしたのは自分が本当にのめり込んで楽しめる音楽を探していたから。

それを彼はハンガリーで見つけた。

ミロスラフやセルト、そして師匠と出会った。

「向こうにいる仲間が俺を求めてくれているなら…尚更……行って、共に演奏したい」

「なら、行きましょう」

「……え?」

あっさりと肯定を示した声にフェオドールは一瞬、呆気に取られてしまった。

「……ついて来て、くれるのか?」

「フェオさんと一緒なら、どこでも大丈夫です」

ふわりと微笑み頷いてくれる彼の最愛、小鳥。

なぜだかフェオドールは無性に泣きたくなった。


「……ありがとう」


涙は零さず笑みを返せば、小鳥も安心したように笑ってくれる。

その表情を見て、フェオドールも迷いを断ち切った。

「そうだ、言い忘れていた。結婚式は向こうで落ち着いてからになるけど、良い?」

「えっ……け、けけっ結婚!?」

「フッ…そんなに驚くなんて」

「お、驚きますよ!それはっ…その…」

頬を染め恥じらいつつ、モゴモゴ。


(プロポーズ…?)


小鳥が心の声を言葉にしようとした時、先回りしてフェオドールが頷いた。

「そう。プロポーズ。こんな形になって…すまない」

謝りながら手を伸ばし、そっと小鳥の手に自分の手を重ねる。

「……それで、返事は?」

囁かれて真っ赤になるも、小鳥は嬉しそうに気持ちを告げた。

「はいっ!」