それからの時間は小鳥にとってあっという間だった。

聴く者の心をグッと引き付ける何かを持っているフェオドールの音が、この空間の全てを支配してしまったからだろう。

演奏が終わって舞台袖に戻って来た時のフェオドールの表情は始まる前よりも輝いて見えた。

「お疲れ~!」

「ああ…」

マネージャーの言葉に微笑みを返す。

それからフェオドールはチラリと小鳥を見つめた。

然り気ない視線だったがピンと来た小鳥は笑顔で彼に言葉を掛ける。

「お疲れ様です。とっても素敵でした」

「……そうか。良かった」

ホッと漏らす吐息。

「……実は後半、少し危なかったところが…」

「え!?全然わかりませんでしたよ!?」

「はいはい、フェオ。反省会はあとあと~!」

ミロスラフがフェオドールを責っ付いた。

「そういう話はいつもの居酒屋に行ってからね~」

「居酒屋…?」

小鳥が首を傾げるとフェオドールが教えてくれた。

「公演が終わると、いつもミロと飲みに行くんだ。今日も行くと思うけど……マドモアゼル、君も来るか?」

「え、でも…私、未成年で…」

「店に年齢制限はないよ。……気にするなら酒を飲まなければいい」

せっかくのお誘いだ。

嬉しいので小鳥はついて行くことに決めた。

「じゃあ…ご一緒しても良いですか?」

フェオドールはふわりと笑む。

「喜んで」