「まだ、だ……。まだ完璧じゃない…」

呟いてからフェオドールが小鳥の身体をグイと引き寄せる。

「小鳥……すまないっ」

再び謝罪した理由は、彼の吐息と牙が首筋に触れたことでわかった。


(吸われる…!)


けれど、彼になら構わない。

むしろ嬉しくて、小鳥は牙の痛みに堪えながら微笑んだ。

「フェオ、さんっ……」

「ん……小鳥っ…」

彼女の血から記憶を吸い取るように貪る。

ゴクン、ゴクンと喉を鳴らす度に大切な思い出のカケラ達がフェオドールの中で徐々に繋ぎ合わさり、形を成していった。


「嗚呼っ……俺は…」


急に牙を抜いたかと思うと、彼は吸血によりボンヤリしている小鳥をきつくきつく抱き締める。

その拍子に小鳥の手から一輪の青薔薇が落ちた。

役目は終えたと言うようにーー「奇跡」を象徴する、青い薔薇が。