「それ……ヴァイオリン?」
フェオドールがケースから出して準備した楽器を見つめちょっと眠気が覚めたのか、小鳥は物珍しげに目をパチクリさせる。
フェオドールは頷いてから再び窓辺に行くと、カラリと窓を開け星明かりに向かってヴァイオリンを構えた。
そして、小鳥の知るメロディーを奏で始める。
「あ…!」
いきなり始まった「星に願いを」のヴァイオリンソロ。
小鳥は嬉しげな声を発して頬を紅潮させた。
傍にある椅子にちょこんと座った彼女は、浴衣でヴァイオリンを弾くフェオドールをリラックスしながら眺める。
(やっぱり、きれい…)
夜空に輝く星も、奏でられる甘いメロディーも、フェオドールの金色の髪も、全てがキラキラしている。
耳に心地好い響きを聴きながら再びうとうとしてきた小鳥は、ふわぁと小さな欠伸をするとゆっくり目を閉じた。
「お休み…マドモアゼル」
椅子に座ったまま寝付いた小鳥を柔らかい眼差しで見つめ、演奏を終わらせる。
フェオドールはヴァイオリンをテーブルに置いて窓とカーテンを閉めると、小鳥の身体を抱き上げて柩に横たわった。
愛しい温もりをギュッと抱きしめて同じ柩の中、眠りにつく。
(ああ……これが、幸せというやつか)
満たされる心を実感して刹那の永遠を願った夜だった。



