人知れず山奥に佇む闇人の旅館「神の隠れ里 夕星楼(ゆうずつろう)」は木造建築の古風なお宿だ。
瓦屋根は青く、入口を飾る燈籠の明かりによってその水底を思わせる深い青が暗闇に浮かび上がっている。
「わあ…!ステキなところ!」
まるで江戸時代辺りまでタイムスリップしたような旅館の外観に目を輝かせる小鳥。
すると、玄関先に立っていた女将と仲居が笑顔で近寄ってきた。
「いらっしゃいませ。ご予約いただいたクラヴィエ様ですね」
「えっ、なんでわかるの!?」
車から降りてトランクから荷物を出していたルカが目を丸くする。
すると女将はにこやかに教えてくれた。
「今宵、この夕星楼にご宿泊なさるお客様はクラヴィエ様のみですから」
「へー。だから他の客、見当たらないんだな」
納得した声を出すカロン。
貸し切り状態なのを嬉しく思いながら彼らは仲居に荷物を預けた。
「お部屋へご案内致します」
そう言われて旅館に入り、淡い照明が灯る細長い廊下を女将についてぞろぞろ歩く。
案内されたのは二人部屋と五人部屋だった。



