そして翌日。

会場まで電車を使うのかと思いきや、なんと家の前に車がやって来た。

「おっすフェオ!お迎えにあがりましたよーん」

車から降りてきたのは赤いシルクハットに赤のタキシードを纏った派手な格好の青年だ。


(うわぁ…髪はオレンジ色で…ほっぺのあれはタトゥーかな?)


片側の頬に蝶柄のタトゥー。

綺麗に化粧した顔はビジュアル系バンドのメンバーかと思わせる仕上がりだ。

呆気に取られて眺めていると、ご本人様と目が合った。

「あれ?誰その子」

「櫻井小鳥……いや、小鳥・クラヴィエだ」

「あっれ~?フェオってば、いつの間に結婚してたの?」

聞いた瞬間、小鳥の顔が火照る。

「ち、違います!私は、その…!」

とっさに否定してみるとフェオドールの手が小鳥の顎を撫でた。

咎めるような指先。

フェオドールの唇が小鳥の耳元に近づく。

「俺のフィアンセだ。噛み付くなよ?」

「へー。人間にしたんだー。ま、フェオにはお似合いかもね」

至近距離にいるフェオドールにドキドキしながら小鳥は目の前に立つ青年の自己紹介を聞いた。

「僕はミロスラフ。ミロって呼んでね、フィアンセちゃん」