さて、翌日の日没後。

夜の闇に紛れて出発するべく、エレベーターに乗り地上までやって来たクラヴィエ一家は車庫から自動車を出して旅行の荷物を詰め込んだ。


「うわー、地上で車とか久しぶり」

はしゃぎながら車内に入るルカ。

彼は開けっ放しのスライド式扉から顔を出して小鳥を手招いた。

「どこ座る?前がいい?」

「どこでも大丈夫ですよ」

笑顔の小鳥がルカの手を取ろうとした時、背後から白魔がガバリ。

「きゃ…!」

抱き着かれて小鳥はちょっと前のめりになる。

「小鳥は僕と一緒に一番後ろだよ」

「どこでも良いからさっさと乗りなよ。邪魔」

白魔の後ろからオーレリアンの苛立った声が聞こえた。

成るべくならフェオドールの隣が良い小鳥は彼を気にしてチラリと視線を送る。

しかし、静理と話しているフェオドールは小鳥のそれに気づかなかった。

「静理、ガソリンは平気なのか?」

「大丈夫だよ。昨日、入れて来たからね」

「わざわざ…すまない」

「フェオが謝ることないよ」

「静理ってスゲー気がきくよな。嫁に欲しいタイプ」

「カロン、それは褒め言葉なのかい?」