「気をつけて…」

「あ…はい」

抱き着いて原因を作ったのはそっちなのだが、なぜか注意されてしまった。

いや、それよりも。


「良かった…!フェオさん、戻った!」

「戻った…?何の話だ?」


子供になっていた時の記憶がないのか、首を傾げるフェオドール。

彼はボンヤリ周りを見回すと、どういう状況なのか説明してくれと近くにいたカロンに目で訴えた。

『あんたはフェオドール。俺の兄貴。わかる?』

「……馬鹿にするな。そのくらいわかる」

『あんたは子供になってイケメンコンテストに出てたんだぜ。覚えてねーの?』

「………全く」

そうか、この状況はコンテストの真っ只中なのか、と理解したフェオドールはとりあえず捲れていた自分の服の袖や裾をもとに戻した。

ステージの中央で何とも呑気なことだが、これがマイペースなフェオドールにとっての優先すべきことなのだから仕方ない。


「ねえ…あれって、フェオドール・クラヴィエじゃない?」

「え?あのヴァイオリニストの!?そっくりさんじゃないの?」

「えー?あんな華やかな金髪イケメン、本人以外いないでしょ」

何やら外野がザワザワし始めた。

ステージの周りで見ていた女性達がフェオドールを写メりながらざわめき出す。