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 ある日のこと、小鳥は静理からブラッディーボトルを一本渡された。

「はい、これ。フェオに持っていってあげて」

「え?フェオさんに…?」

今日はフェオドールの姿を屋敷内で見ていない。

てっきり出掛けているのかと思っていたのだが、どうやらどこかにいるらしい。

「フェオ、明日リサイタルをやるらしいんだ。一日前は決まって部屋に閉じこもって練習しているから、食事を届けてあげてほしいんだよ」

「わかりました」

頑張ってヴァイオリンの練習をしているフェオドールのためになるならと、小鳥は喜んで承諾。

ブラッディーボトルとグラスを受け取った。

「良かった。きっとフェオも小鳥ちゃんになら不機嫌にならないだろうから」

「不機嫌…?」

「本番が近くなるとピリピリしてきて、一人にしろってうるさいからね。食事を運ぶこっちがいつも睨まれるんだ」


(睨まれる!?)


まさかの情報にビックリしている小鳥の肩を静理はポンと叩いた。

「じゃあ、任せたよ」


押し付けられた、と思ったが後悔先に立たず。

小鳥はビクビクしながらフェオドールの部屋に向かった。