破いて彼女はこう言った。


――いつまでも過去を見てちゃダメだよ。お母さんに縛られてたら前に進めない。リアンのこれからに良くないよ


「……正論かもしれない。理解もできる。けど、僕の心はそれを許さない」

悲しげに瞼を伏せ、オーレリアンは自嘲気味に笑う。

「結局僕は、自分に都合のいい意見しか聞かないんだ。あいつは僕と考えることが違う。だから一緒にいるなんて疲れるだけだし、好きにもなれない」

「なら私は……オーレリアンさんと同じ考え…なんでしょうか…?」

「お前は僕のことを否定しなかった。今はそれだけで充分だ」

どこにも行くな、と命じるように全身できつく小鳥を抱きしめるオーレリアン。

それはまるで、母親に縋り付く幼子のそれだった。


(大丈夫…。私はここにいます。だから、怖がらないで――)


小鳥は彼の背中に腕を回し、優しくあやすように撫でたのだった。