「っ……小、鳥…」

動揺したのだろうか。

オーレリアンが名前を呟いた。

困惑するような、訝しむような眼差しで小鳥を見つめる。

彼の瞳が切なげに揺れた。


――キーンコーンカーンコーン…


始業を告げるチャイムが鳴る。

元カノは気まずそうにミルクティー色の髪をかき上げながら席に戻っていった。


(言えた…。私が言いたいことは……言えたんだ)


彼女の後ろ姿を見送りながら小鳥は緊張を解いた。

誰かに意見することはやたら大変で、気を遣う。

あまり他人にものを言うのが得意じゃない小鳥だが、今回は自分の言いたいことがしっかり伝わったと確信できた。

苦手なことを頑張ったのは、ひとえにオーレリアンのため。

そっと隣の彼を見る。

すると、真っ直ぐこちらを見つめるオーレリアンと目が合ったが、すぐに視線をそらされてしまった。



それから学校にいる間中、彼はほとんど小鳥としゃべらなかった。

ずっと何かを考えるように、黙って小鳥を瞳に映していた。