「なあ…フェオ。千回はキツくねぇ?せめて百回とか…」
カロンが横から恐る恐る口を挟む。
「ルカは千回と決まっている。百回で赦されるのはオーレリアンだ」
「マジか。ちなみに俺の場合は…?」
「一万回」
二人の会話を聞いたオーレリアンはハッと目を見開いた。
「っ!!思い出した!僕が兄様を“兄様”って呼ぶようになった理由…!そうか……これだったのか…」
一人で納得している彼に小鳥はコソッと尋ねる。
「何ですか?」
「……昔、まだ母様が生きてた頃…兄様のヴァイオリンを遊び道具にしていて壊したことがあるんだ。その時…兄様は僕に今と同じことを言ったんだよ」
――兄様ごめんなさいと百回言え
自分の時を思い出し、オーレリアンはぶるりと肩を震わす。
「百回…言ったんですか…?」
「………うん。あれ以来無意識に“兄様”って…」
とにかく怖かったんだ、と蚊の鳴くような声で続けた。
「おいルカー。言っちまった方が楽だぞー」
カロンが勧めるも、ルカはブンブン首を横に振る。
「い、言えるかよ!千回も!」
「ならば身体で償え」
フェオドールの容赦ない蹴りが炸裂。
それらを間一髪で避けながらルカは廊下へ飛び出した。
「逃げるうううっ!!!!!!!」
「待て貴様っ!!!!」
もちろんフェオドールも後を追う。
「ルカ…骨は拾ってやるぜ」
「血もね。まずそうだけど」
カロンとオーレリアンの冗談に聞こえない冗談を耳にしながら小鳥は苦笑した。
フェオドールを本気で怒らせてはいけない。
そう肝に銘じた日となった。



