(ふう…良かった)


色々と処理を終えてトイレの個室から出て来た小鳥。

ホッと一息つきながら流しで手を洗っていると、突然後ろから肩を叩かれた。

「っ!?」

ここは女子トイレ。

女子に知り合いはいないはず。

大袈裟過ぎる程、ビクリと身体が跳ねる。

「あら、驚かせちゃった?ごめんなさい」

明るい声に振り向くと、背後には長いミルクティー色の髪をした可愛い顔立ちの少女が立っていた。

「あ、あの…何か…?」

警戒しつつ尋ねる。

すると、少女が小鳥の目をジッと見つめてきた。

「あなた、リアンの彼女?」

「へ?リアン…?」

誰のことだろうか。

わからず目を点にしていると…。

「オーレリアンよ!オーレリアン・クラヴィエ。あなた、さっきからリアンと一緒にいるでしょ。手を繋いで廊下歩いてたし」

繋いでいたというよりも引っ張られていただけなのだが。

そんなことを頭の片隅で思いつつ、オーレリアンを親しげに「リアン」呼びする彼女を見つめ返す。

心臓がやけにうるさく鳴った。

「私ね、リアンの元カノなんだ。だから忠告してあげる。リアンと付き合ってるならやめた方がいいよ。彼、すっごいマザコンだから。マザコンな彼氏なんてあなたも嫌でしょ?」

「えっ……あ…」

小鳥は何も言い返せなかった。

少女のリアン呼びに戸惑い、元カノと聞いて脳内が一瞬真っ白になる。

「あんなマザコンお坊ちゃんとは別れた方があなたのためだよ」

そんな言葉を最後に、元カノはトイレから出て行った。