「兄、様…っ」

オーレリアンが呆然とフェオドールを見つめる。

まさか兄がいて、しかも小鳥の髪を乾かしているなどとは夢にも思わなかった、という表情だ。

「……来たか」

フェオドールと目が合い、オーレリアンは恥ずかしさで一歩後ずさる。

わざわざタオルを取りに戻って、こうしてまた来てやったのに、全て兄がやってしまった後だった。

今ここにいる自分が滑稽に思えてならない。

そのまま廊下へ出て行こうとしたオーレリアンだったが…。


「オーレリアン、代わって」


兄が手招いた。

こちらへ来てドライヤーをやれと言う。

あまり気乗りしなかったが、オーレリアンはフェオドールの隣まで近づいた。

ドライヤーを受け取り、鏡に映る小鳥を見る。

「それ……兄様のタオル?」

「あ……はい」

「……そう」

気にいらない。

弟の顔に書いてある感情を読み取ったフェオドールはクスリと笑うと、小鳥から自分のバスタオルを取り去った。

「あっ」

「兄様…!?」

「もう俺のは必要ないだろう」

そう言って横目でオーレリアンを見遣ると、フェオドールは脱衣所から出て行ってしまった。


「兄様…」

兄の瞳を思い出しながら今やるべきことを考える。

そして、オーレリアンは自分の持ってきたバスタオルを小鳥にかけた。

「あ…」

オーレリアンの香りがする。

彼に抱きしめられたらこんな感じなのだろうか。

小鳥が想像していると、ドライヤーの温風が髪に送られてきた。


「オーレリアンさん…」

「何?」

「ありがとうございます」

「………馬鹿」


ずいぶんと甘い声の「馬鹿」だった。