†††




「ハァ…うざいうざい」

自室にて独り言。

オーレリアンは脱力するように溜息を吐き出した。

「僕を選ぶとか…何考えてるんだか」

自分の名前が小鳥の唇からこぼれた時、一瞬だけ嬉しいとか思ってしまったのは何かの間違いだ。

そう心に言い聞かせる。


(僕はあんなのに関わってる暇なんてないんだ)


オーレリアンは乱暴に白衣を羽織った。

そして研究者の顔になる。

続いて眼鏡をかけようとした時、コンコンと部屋の扉がノックされた。

「誰?」

少し刺のある口調で問いながら扉を開けば、そこにはうっとうしいくらい元気な兄が。

「オーレリアン!」

「ルカ、か…。何?なんか用?」

「あのさ、今暇?暇ならちょっと付き合ってもらいたいんだけど」

「暇じゃない。他当たれ」

そう言って直ぐさま扉を閉めようとした時だった。

ルカが横を向いてこう言った。

「だってさ、小鳥。やっぱり買い出しは俺と行こう?」

「は?メスブタ?」

オーレリアンもルカと同じ方向を見る。

すると少し離れた廊下の曲がり角から、そわそわした様子でこちらを見ている小鳥が視界に映った。


(なんなんだよこの距離は。というか、なんでわざわざルカを間に挟むかな。イライラするっ)


「す、すみません。やっぱりオーレリアンさんは…忙しいですよね…」

離れた所でしゅんとしている小鳥に苛立ちながら、オーレリアンは彼女にツカツカと近づいた。