(大切な人…?)
オーレリアンにとっての大切な人は母親だったはずだ。
しかし今の発言では母親以外の「誰か」を指している。
(自惚れても、いいのかな…?)
自分のことではないだろうか。
小鳥がドキドキしていると、オーレリアンがポケットから何かを取り出してこう言った。
「小鳥、左手出して」
「え、うん」
何も考えず言う通りに左手を差し出した小鳥。
すると、オーレリアンは小鳥の左手薬指にスッと指輪をはめた。
「これは…?」
「婚約指輪」
「えっ!?」
驚きながら小鳥は自分の薬指におさまった指輪をまじまじと眺めた。
モチーフは薔薇。
花の中心部分に小さなダイヤがついていて、星明かりにキラリと光っている。
(とっても綺麗…)
婚約指輪を渡してくれたということは、オーレリアンにプロポーズされたも同然。
けれど、小鳥は素直に喜べなかった。
(まだ、オーレリアンに好きだってちゃんと言われたことないのに…これをもらっていいの…?)
綺麗な婚約指輪よりも、たった一言の方が欲しい。



