(どうしよう…。かなり濡れちゃった)


疲れたような表情で、ゆっくりとバスルームから出る。

小鳥は脱衣所にある鏡で今の自分の姿を確認した。

濡れてぺっとりとした髪。

胸元ギリギリまで裂かれた衣服。

鎖骨下の牙痕。

赤く滲み出る血。


(傷…手当てしなきゃ…。でもまずは、身体を拭きたいな…)


濡れたままなので気持ち悪い。

小鳥はバスタオルを取りに自分の部屋へ戻ろうと、脱衣所の扉に手をかけた。

と、その時。


――ガチャリ


先に廊下側から誰かが扉を開けた。

「……マドモアゼル?」

「あ…フェオさん」

入ってきたのはフェオドール。

「………」

フェオドールは沈黙したまま小鳥をジッと見つめた。

その視線から逃れるように目をそらすと、小鳥は努めて明るい声を出した。