「お前さ、調子に乗るなよ」
キュッと蛇口をひねって水を止めると、オーレリアンは自身の服の袖で小鳥の頬をゴシゴシ擦った。
「カロンにキスされて嬉しそうな顔するな」
「っ…!」
擦られた所がキスされた場所だと気づき、ハッとなる。
オーレリアンは汚れを落とすようにそこを擦り続けた。
「…ごめん…なさい」
「へー、やけに素直じゃん。気持ち悪い」
吐き捨てるように言ってからオーレリアンはニヒルに笑う。
「本当ならこの顔に僕の牙で醜い穴を開けて、お前なんかにキスしたいとか誰も思えない顔にしてやりたいところだけど…お前から謝ったからそれは無しにしてやるよ。その代わり…」
いきなりオーレリアンが襟を掴んできた。
濡れた服がビリッと破ける音がしたかと思うと、露わになった鎖骨の下にオーレリアンの牙が埋め込まれる。
「っあ!」
無防備な状態で与えられた痛みに小鳥は身体を震わせた。
「んっ…やっぱり……お前の肌、気持ちいい。血も…甘い」
湿った肌に吸い付くように唇を寄せられ、啜られる。
「ハァ……イライラしてたけど、ちょっとマシになった」
牙を抜くと、オーレリアンは血が滲む小鳥の傷口に爪を立てた。
「痛っ…!!」
「この痛み、忘れるなよ。これは仕置きなんだ。また似たようなことがあったらもっと酷くしてやるから」
それだけ言うと彼はバスルームから出て行った。
びしょ濡れになった小鳥を一人残して。



