「自分は、あの子の悲しみを…痛い程、知っていたんです…」
重なるのは昔の自分自身。
親兄弟の骸に覆いかぶさって泣きわめいた、桔梗丸になる前の、拓(たく)という名の子供。
「一瞬、時が止まったかのようでした。さっさと残りの鬼子を殺さなければならないのに……自分は、動けず…刀を構えたまま……どうしても泣いている子供の首を、落とすことができなかった…」
その隙をついたのが親である雪風だった。
息子を殺された怒りに任せ、彼は桔梗丸に一太刀(ひとたち)浴びせた。
「雪風様にやられた傷が…これです」
前髪を上げ、隠していた左目を曝す。
そこには縦一直線に大きな傷痕があった。
「この傷は自分に闇人の痛みと悲しみを教えてくれました。それから…今まで正しいと信じてきた道が、実は間違いだったのではないかということも」
鬼に涙する感情があるなんて知らなかった。
鬼に家族を思う心があるなんて考えたこともなかった。
「その後はもう…何が正しくて誰が敵なのか……わからなくなってしまって…」



