アホ面と言われてグサリときた小鳥だが、照れ隠しなのか本音なのかよくわからない発言だったので気にしないことにした。

そうですかと苦笑して本棚に視線をやる。

と、その時。

「あれ?」

ある本の背表紙に目が引き付けられた。

「何?どうしたの?」

「この本、著者名が…」

「ん?ジェラルド・クラヴィエ…?は?父様の本?」

ジェラルド・クラヴィエ著。

タイトルは『マドモアゼルとの甘い過ごし方』だ。

「………なんだか…内容が気になるタイトルですね」

しかも結構分厚い本である。

「読むな。絶対ろくなこと書いてないから」

オーレリアンが額を押さえながら溜息をついた。

「ジェラルドさんの本職って、何なんですか…?」

「無駄に長く生きてるからね。色々やってるよ」

執筆活動をしていた時期もあったような、ないような。

オーレリアンは思い出すのも億劫そうに顔をしかめる。