-陰陽之書-


 やがて、ずるずると地面に身体を擦りつけ、屋敷に戻ってきた主は、夜具まで辿り着いた。

「おお、かようなところにおったのか、伊助や」

 大きな西瓜を前に、黄色い歯を見せてにやりと笑った。


 もはや骨ばかりとなった細すぎる腕で西瓜を掴むと、主は大きな口を開け、がぶり、がぶりと硬い皮ごと、赤い果実を喰らう。


 がぶり、じゅうじゅう。

 主は西瓜のすべてを喰らいつくし、やがて夜が明ける頃。

 穏やかな顔つきのまま息絶えている主の姿があったという。



 ―完―