檸檬色





「治療なんてだーめ
だって、この子の命が一番大切」



美穂さんのお腹の中には
私がいた


私を守るために
癌の治療を一切せず
日に日に体が壊れていくのに耐えていたみたい





予定日の3週間前



もう美穂さんは座ることも
話すことすら辛い状況で

笑顔がチャームポイントと呼ばれるくらい明るかった彼女の顔は、げっそり痩けていた



「美穂!!
お願い!お願いだから…治療して…」



お母さんが泣きながら頼んだら
いつも精一杯笑って



「私、この子を守らないと」



細い指で、お腹を撫でていた