檸檬色




叫ばないと
叫ばないと


「あ………」


声を出そうと思っても
怖くて出ない


もう日が沈んでて、誰にも気づいてもらえない


「びびってる?
大丈夫だよ」


車が目の前でとまり
タカシがドアをあける

一瞬腕が解放される




今しかない




パッと走り出す

怖い怖い怖い怖い



「おい!!!」




「あっ」



目の前を歩いてた人にぶつかり転んだ


「いてぇ
どこ見て走ってんだよ!」


「あの…あの…」



助けてもらえる!


「あの…たすけ」「夏稀!」


後ろから転んだままのうちの体を抱き上げる


「夏稀~、海だからってテンションあがりすぎ
すみません、こいつぶつかりました?
ご迷惑をおかけしました」


「あ、いや
まぁちゃんと見とけよ」


そう言って去っていってしまう