落ち着いた交際を見せていた、俺と伊織は現役で大学に受かることとなる。


 学部は違うが、同じ大学。


 これまで以上に会うことが容易になったし、お互いに近いアパートを借りての一人暮らしをした。


 伊織は俺との適度な距離を保ったままだった。


 俺の部屋に入り浸ることもなく、四六時中一緒に過ごすこともなく。


 今までより過ごす時間は増えたが、変わらぬ時間が流れる。


 淀みなく水が流れていくように。


 そして、高校で伊織と出会ったように、大学で新たな出会いが俺を待ち受けていた。


 伊織とは正反対の落ち着きがないアホの代名詞のような男だ。


 俺の人生において忘れることがないだろう人物は4人。


 瑞希と奏兄、そして伊織。


 4人目は丹羽誠一。


 名前は本人を表すとは大間違いな鬱陶しい男。


 誠実さのカケラもない、こいつを誠一など呼べるはずもなく丹羽と呼ぶのは必然であった。


 丹羽は天才で破天荒で軽薄な男だった。


 この大学が唯一受かった大学だったらしい丹羽。


 それは、この大学の試験が一番飽きることなく寝なかったからだとか。