告白に頷いたのは、見目が良かったことと彼女もいなかったから。


 でも、過ごしていくうちに感情が揺れ動かされない関係に居心地の良さを覚えた。


 二人でいる時間は、話をしている時も静寂の時も乾いた風が通り抜けるような感覚。


 初めてだった。


 瑞希といれば、せわしくなく感情が揺さぶられた。


 他の女といれば、一緒にいることに苦痛を感じた。


 一緒にいて、何も感じさせない、白黒の世界のように静寂に保てたのだ。


 心が。


 俺は安定を求めていたのだ、心のどこかで。


 その求めていた均衡が彼女といることで保たれた。


 高校2年の時に付き合い、それから一年が過ぎた頃には、俺はこの女と結婚しこの平穏な生活を最期の時まで刻み続けたいと漠然と思っていたくらい。



 そう、それくらい彼女は俺の最適な恋人だった。


 伊織を家に連れて行くこともそう珍しくはなくて、親は俺が落ち着いたことに胸を撫で下ろしていた。


 伊織といると自分を保てた、けれどそれが崩れてしまうのは二人の前で。