最初で最後の嘘




「人は自分のものさしでしか相手を測ることができない。お前に俺の気持ちがわからないのも当然だ」



「そういう奏兄の上から目線が嫌いなんだ。何を言ったとしても、お前の気持ちは俺なんかより……」



 首を横に振りながら奏兄は遮った。


 聞いていられないとでも言うように。


 奏兄の気持ちをわかっていないとでも言いたいのだろうか。



「俺からしたら、自分優先の歩のほうが劣っているように思うんだ。本当に愛してるなら瑞希を悲しませることなんかしない。彼女のことを尊重してやりたい、って思うじゃないのか?」



「やっぱり、お前は偽善者だ。自分のものにしたいと思うはずだ。本当なら」



 奏兄の意見は偽善的で聖母が言いそうな陳腐な言葉にしか聞こえない。


 俺は瑞希を渡したりしない。


 奏兄の気持ちがその程度なら、なおさら。