哲の家は桜山と呼ばれる山の麓にある二階建ての小さな一軒家。
辺りは草木が生い茂り、ほんのすぐ近くには田んぼや小川が流れているような場所である。

交通にとても不便な場所であるために、昼間でも薄暗く人通りの少ない細い路を15分ぐらい歩き、桜の木に包まれた道、桜ロードの真ん中を通り過ぎ住宅地へと出て、そして桜乃高校行きのバスに乗らなければならなかった。
珠実が学校に着くのはいつもギリギリか遅刻で。
少しばかり遅れても気にしないような学校だった。


「あんっ、もうっ」

珠実は道端に所々にある水たまりを避けるようにジャンプしている。