高い岩壁の上に広がる草原の中、風だけが二人の間を通り過ぎていき。一本の大きな木は二人を見下ろしていた。
白いスカートが風に吹かれてフワリと広がり、幼い少女は青年にすがりついて泣いている。

参ったな、泣かせたい訳じゃなかったんだけど・・・そんなことを思いつつも。青年はポケットから何かを取り出すと、少女の背丈に合わせるように屈んだ。

くすん、くすん。


「ね、泣かないで。アーシャ、コレを持って」

「なあに・・・」


青年は幼き少女に小さな白い塊を渡す。少女はそれを見て涙を拭った。

「僕の大事な宝なんだ」

「大事な・・・宝?」

「アーシャにすごく困ったことがあった時、コレを吹いて。僕にしか聴こえない音。必ずアーシャを助けに行く」

「・・・うん」


少女は青年の黒い瞳を見つめた、すると青年はにっこりと微笑んで少女を優しく抱き締める。
フゥゥー・・・っと優しく二人を撫でるように風が通り過ぎていく。
すると、青年と少女の僅かな間から光がうっすらと漏れた。
いつの間にか、少女の胸に飾ってあるペンダントが青白く点滅している。

「・・・あっ」

ペンダントからキラキラと眩い光がどんどんと溢れて少女だけを包み込んでいく。

光に包まれた少女は最後に手を伸ばして。

「さ・・・ら」


アーシャ、忘れないで
僕と君の
この出逢いがあったことを……ーー
幾年の時が経ったとしても。
君が僕を必要とした時
必ず助けに行くから