俺は、ちゃんと家を留守にするか確認したかっただけなのに、この母親は一体何を考えているんだ。

『柚月を嫁にもらう話もってなんだよ。それにお泊まりオッケーって…』

『あら…旅行って名目で私達を追い払ってゆずちゃんと仲良くするつもりなんでしょう⁈だから、ゆずちゃんのご両親に事前に承諾いただいてあげたのに…感謝してほしいわ』

心の奥底をのぞかれたようでイラッとするが

『……』

俺がしようとしていることをウスウス感ずいて先回りされたらしい。

まぁ、余計な手間がはぶけたから感謝しよう。


引っ越し当日

引っ越し業者が来る前にお隣に挨拶だ。

『おはようございます』

奥からバタバタと音を立て出てくるおばさんに頭を下げ挨拶する。

『あら、悠くん…⁈…久しぶり。しばらく見ない間にさらに男前になって…』

『お久しぶりです。おばさんもお綺麗なままですね』

『ふふふ…上手にお世辞も言えるように
なったのね』

『……母さんから聞いていると思うんですけど…』

『その話なら大丈夫よ。遠慮なく食べにいらっしゃい。柚月のお婿さんになるんだもの…あの子、悠くんのこと好きなのに素直じゃないから…私も協力するからバンバンアタックしてほしいわ。私達は、明日結婚するって聞いても驚かないわよ』

苦笑いするしかない。

柚月の親もぶっ飛んでる。

でも、柚月は俺を心の奥底で好きでいてくれてるかもしれないと希望が湧いた。

そうであってほしい。

とりあえずは、おばさんの協力のもと俺は柚月をもう一度振り向かせることになる。

引っ越し業者の車の雑音にカーテンを開けた柚月が窓際から見ていた。

数年ぶりに見る柚月をチラッと見て口元が緩む。

さぁ、始めよう…

いくつもの嘘に隠した本気にお前は気づくだろうか⁈

今、話題の入手困難なネックレス

あらゆるツテを使い手に入れた。

どんなことをしてもこれは欲しかった…

なぜなら…小さな時にあげたオモチャのネックレスを思い出して欲しかったからだ。

素直に受け取ってもらうには、深い意味などないと思わせたい。

柚月の部屋の前で2人きり

久しぶりに間近で対面する柚月は、幼さが消え、大人の女だった。

色気のある眼差しに考えていた言葉が吹き飛ぶ。

『そんな顔するな。まぁいい…やるよ』

抱きしめたい衝動に平静さを装い嘘の演技で手渡す事に成功する。