地元に戻った俺

だが、柚月の側に近づく勇気もなく遠くから見ているだけだった。

柚月の大学と合コンし、柚月の情報を引き出し、あの手この手を使って恋愛を妨害した。

柚月を狙う男がいると知れば、そいつを狙う女を見つけて煽り、柚月に害を与えないと約束させ男を落とす技を教えてやる。

柚月の外見しか見ていない男なら、それでうまくいった。

男は、やらせてくれる女に靡いていく。

でも、中には本気で柚月を思っている男もいた。

こいつが厄介

何をしても、柚月一筋で心変わりしない。

最大のライバル出現に焦った。

だが、唯一の救いだったのが柚月にとって今はまだ、友達の1人でしかないという事。

社会人になり、環境が変われば柚月の気持ちも変化するかもしれい。

だから、やっと俺は重い腰を上げ行動に出ることにした。

やるからには、短期決戦だ。

嫌われている俺が気長に待っていたら、横から奪おうとする奴に勝ち目なんてないんだ。

周到に計画を立て行動開始だ。

まずは…電話だ。

『……あっ、母さん。そろそろ2人の結婚記念日じゃないのか⁈』

『えぇ、それがどうしたの?』

『今年は、どこに行くか予定してる?』

『それがね、まだなのよ』

『それなら、俺から結婚記念日に旅行をプレゼントするよ。5泊ほどしてきたらどう⁈』

『あら、気前がいいわね。でも、お母さんとしては悠ちゃんのお嫁さんがほしいんだけど…ゆずちゃんとどうなってるの?』

『あぁ、その話なら母さん達が旅行へ行ってくれれば、実現するかもしれないね』

『それなら、お父さんと行ってあげるわ
。佐藤さんご夫妻もお誘いしようかしら⁈』

『それは、ダメだよ。おばさんには家に居てもらわないと柚月が警戒するからね』

『警戒ね…何をするつもりなのかしら⁈ゆずちゃんを傷つけることしないなら何してでも手に入れない』

何してでも手に入れなさいって…
親が子供に言うセリフか⁈
この人は、どこまでわかって言ってるんだろうか……

『とりあえず、近々そっちに戻るから部屋空けといて』


引っ越しの日の前日

仕事帰りにそのまま実家に車で戻っていた。

『旅行だけど大丈夫だよなぁ⁈』

『大丈夫よ。お隣には留守の間、悠ちゃんの晩御飯の支度お願いしてあるし、ゆずちゃんをお嫁さんにもらう話もしてあるし、お泊まりオッケーよ』

もしもし⁇
今、突拍子もないこと言わなかったか⁈