「リーズさん、素晴らしい別荘でしょう!
みとれてしまいますね!」

「え……?
あ…あぁ、本当に素晴らしいですね。」

「中がこれまたすごいんですよ。
早速、見せていただきましょう!さぁ!」

ジネットとヴェールは、リーズを引きずるように中へ連れていった。



しばらく寛いだ後、夕食の時間となった。

「あぁ!おなか減った!
今日は朝から何も食べてないからおなかペコペコだよ…」

「リーズさんの作ってきて下さったものは食べなかったのか?」

「あぁ、あれなら捨てた。」

「捨てた…?」

「だって、あの時はまだ食欲もなかったしさ。
揺れる馬車の中であんなの食べたら気持ち悪くなっちまうよ。
それにさ、こっちに来てから本格的な味の料理ばっかり食べつけてるから、素人の料理はねぇ…」

「サリー、失礼だぞ。
リーズさんがわざわざ作ってきて下さったのに…」

「いえ…サリーさんのおっしゃる通りです。
お気になさらないで下さい。」

「ねぇ、レヴ!向こうに着いたら私も馬に乗せておくれよ。」

「君は馬はあまり好きではなかったのではないのか?」

「そんなことないさ。
あと、ボートにも乗ってみたいんだ。」

「そんなことをいって、着いたらワイン蔵から出てこないんじゃないのか?」

「もう飲まないよ!
旅に出るまでの間、いろんな所へ連れてっておくれよね。」

「…レヴ様、旅に出られるのですか?!」

「そうさ、あたし達はずっと一緒に旅を続けてきたけど、これからもまた一緒に旅に出るのさ。
あんたのことがなけりゃ、すぐにでも発つ予定だったんだけどさ。」

「では、私のために…」

「そうじゃないさ。
フレデリックの頼みだから断れなかったのさ。
レヴは誰にでも優しいからね。」

リーズの目は涙でうるんでいた。



「サリー、まだ酔ってるのか?
リーズさん、旅に出るのは本当ですが急ぐ旅ではないのです。
私ももう少しゆっくりしたかったので、あなたのおかげでそう出来るようになって喜んでいるのですよ。」

「私もですよ、リーズさん!
あなたのおかげでまたレヴさんのお屋敷で大好きな本が読めますし…」

「私もです。
レヴさんのお屋敷の花畑はそれは見事で…」

リーズは何も言わずに黙ってうなずいた。



「そうかい、そうかい。
みんな、そんなに屋敷が気に入ってたとは知らなかったよ。」