(ねぇねぇ、あれがローラさん?)

(あぁ、そうだが…)

(……同じ人間とは思えないよ…
なんて綺麗な人なんだ。
お人形さんみたいじゃないか!
あんた、本当に惜しい事をしたね…)

(……そうだな…)

フレデリックの家には、レヴ達以外には誰も来ていなかった。
明日、友人を招いてのちょっとしたパーティを開くのだという。
しばらく寛いだ後、レヴ達は食卓を囲んだ。



「本当におめでとう!
しかし、驚かせてくれたな。
ちょっと留守にしていた間に、結婚はしてるわ、新居は建ってる…」

「あなたが長い間、帰ってこないからですよ。」

「ハハハ。
叔母様、そのお蔭で私はこんなに幸せになることが出来たんですから、レヴには感謝してますよ。
それにしても、何年ぶりになるかな?
レヴはなんだかこう…うん、大人っぽくなったな。」

「……本当に…
一回り逞しくなられたように見えますわ…」

ローラは優雅に微笑みながらそう言った。



「レヴは年齢だけはもう立派な大人ですからね!」

「大人っていうか、おじさんだよね!」

「……おじさん…?
レヴ、面白いご友人だね。
今までの君のまわりにはいなかったタイプだね。」

ローラも声を潜め、くすくすと笑う。



「それにしても、とてもご立派なお宅ですね。」

「本当に素敵ですわ!
お部屋のセンスも素晴らしくて…」

むっとした表情のレヴに気付き、ヴェールとジネットは話題を変えるため、屋敷のことを誉めた。



「ありがとう!
これは、全部ローラの趣味なんですよ。
あの絵…あれもローラが描いたものなんです。」

「へぇ~!すごく上手だね!
あの絵なら、高くで売れそうだ!」

「まぁ、面白いことをおっしゃるのね。
レヴさんの絵に比べたら、私なんてまだまだですわ。」

「えっ!レヴ、絵なんて描けるのかい?」

「屋敷に何枚も飾ってあるのは見られませんでしたか?」

「私はてっきり有名な画家の絵だと思ってました!
あれがレヴさんの描かれたものだったとは…」

ヴェールは驚いた様子でレヴの顔をみつめた。



「…この子は小さい頃から、絵を描くのが好きで、姿が見えないと思ったら、たいてい部屋にこもって絵を描いてたんですよ…」

「ここにもあるんですよ。
だいぶ前にレヴさんに描いていただいたものが…後でお見せしますわ。」

食事の後にローラは皆を広い応接室に招き入れた。
そこには、美しい微笑みを浮かべたローラの肖像画があった。



「こんなものをまだ持っていてくれたのか…」

「えぇ…これは私の宝物ですから…」



(……この頃は、まだレヴとローラはうまくいってたんだろうな…
レヴは本当に良いの?
なんで、そんなに平然とした顔してられるんだ…)

絵を見ながら談笑をしている皆を横目に、サリーは一人、複雑な想いを胸に抱えていた。