「サリーさん…どうかなさったんですか?」

「…え?なんで?」

「いえ…やけにお静かなので…」

「そんなことないさ。
普通だよ!」

「あんまり静かだと心配になるな…」

「…え?」

サリーがやっと顔をあげてレヴの方を見た。



「雨が降りはしないかと…な…」

「な…なに~~~っっ!!」

昨夜、レヴの両親におかしなことを言われてしまってから、変にレヴのことを意識してしまっていたサリーだったが、レヴのその一言で気持ちが冷静に戻った。



(ふんっ!
こんな奴の嫁さんなんて、頼まれたってお断りさ!)

それから、昼食においしいワインを飲むまで、サリーのご機嫌はなかなか直らなかった。



「もうだいぶ近づいてきたと思うぞ。」

「ねぇ、あんた、本当になんともないのかい?
仮にも婚約者が別の男と結婚してしまったんだよ!?」

「それは、私が悪いのだ。
勝手に長い間、家を留守にしてしまったからな。
それに他の男といっても、相手がフレデリックなのだ。
彼なら何の不足もない。
いや、むしろ、彼と結婚した方がローラは幸せになるだろう。」

「……本当にあんたって人は……」

太陽が傾き始めた頃、ようやく馬車が停まった。



「どうやら着いたようだな…」

「うわぁ…」

レヴの屋敷に何日も滞在し、大きな屋敷には慣れたはずだったが、またしてもサリーの口があんぐりと開いてしまう。
新しく建てられたその屋敷は、真っ白な外壁がオレンジ色の陽にうっすらと染められ、とても美しいものだった。



「レヴ!!」

「フレデリック、久しぶりだな…」

大きな門が開いて、金髪の男性と女性が一行を出迎えた。



「叔父様、叔母様…
それに皆様もよくお越し下さいました。
さぁ、中へどうぞ!」