緑と石の物語

「私が……?
それは人違いですよ、きっと。」

「なぜだ?」

「私はあの森にいた頃、女性を案内したことはおろか、女性と話をしたことさえありませんよ。
唯一、会ったのがサリーさんです。
サリーさん以外に女性と会ったことはありません。」

「そういえば、以前、そんなことを言っていたな。」
しかし、それならば、一体、どういうことなんだろう?
シャルロさん、その女性はどんな方でしたか?」

「背の高い美人だったぜ。
髪が長くて色が黒い…」

「………まさか?!」

レヴとヴェールは顔を見合わせた。



「今、まさかと言ったのはどういうことだ?」

「いえ…その容姿がジネットさんに似てるな…と…」

「何?
君もそう思ったのか?!
私もだ…
しかし、ジネットさんが君を探す理由があるか…?」

「レヴさん!
お屋敷に帰る時のことを覚えてますか?
あの時、ジネットさんはかなり強行に暗き森を通りたがった…」

「そうだったな…
もしかしたら、彼女は君が案内人だということを知らずに、君のことを探しているのかもしれない…」

「しかし、もしそうだとしたら、一体、何が目的なんでしょう…?」

その理由は、レヴにも皆目わからなかった。



「シャルロさん、その女性はあなたに何を聞きに来たのですか?」

「暗き森の中で迷った時に案内人に助けてもらって、その礼がしたいから案内人を探してるとか言ってたぜ。」

「確かに『暗き森』と言ったんですね?」

「ああ、それは間違いない!」

「それで、その時、あなたには何かが見えたんですか?」

「あぁ、森の民みたいな緑色の髪の人物が数人とレヴさんとサリーさんの姿がな。
だが、おかしなことにその娘はレヴさんやサリーさんを知らないと言った。
だから、あんたらと会った時のイメージがまだ残ってるのかと思ってたんだ。」

「………お話を聞いてると、ますますジネットさんのことのように思えて来ました…」

ヴェールの言葉に、レヴも深く頷いた。



「そのジネットってのは何者だい?」

「旅の途中で知り合った人なのですが…探してる人がいるから一緒に旅をさせてほしいと…」

「そうか……
そいつは考えようによっちゃあ奇妙とも思える話だな。
そんなに悪い印象はなかったんだが…
そうだ!
明日、そのジネットって娘をここへよこしてくれよ。
会ってみりゃあすぐにわかることだから。」

「そうですね。
それが一番確実で手っ取り早い。」

「よし、それじゃあ、明日な。
しかし、遅くなったな。
今夜は泊まっていくかい?」