「おぉ…また来てくれたのか!
皆、元気そうじゃな。
そんな所に突っ立ってないで、さぁ、入った、入った!」

ピエールは、顔をほころばせながら、皆を店の奥へ案内した。



「しかし、まだこのあたりにいたとはのぅ。
もうとっくに旅に出てると思っとった。」

「…まぁ、いろいろあってね…
それより、ピエール!なんでレヴの屋敷に来なかったのさ!」

「馬鹿を言うな。
わしなんかが訪ねて行ける場所じゃないだろう。」

「そんなことないよ。
レヴのお父さんもお母さんも、レヴとは違ってすごく気さくな良い人達だったよ。
あたしさ、パーティにも出たんだよ。
ドレスも作ってもらったしさ、毎日、おいしい食事やお酒を飲んで…
夢みたいな毎日だったよ。
あ、それからね…」

「サリー、まずはお茶でも飲もうじゃないか。
話はそれからゆっくり聞かせてもらうよ。」

サリーの話がまだまだ尽きないことを察したピエールは、そう言って微笑み、お茶の準備に取り掛かった。



「あたしも手伝うよ。」

サリーがピエールについて台所に立った時、「荷物を置いてきます」と、ジネットは奥の部屋に向かった。

ジネットはドアを閉め、この数ヶ月、ずっと気になっていた本棚の本を取り出した。



(あった…!!)

そこには、ジネットがはさみこんだままの写真があった。



(…良かった…ピエールさんにみつからなくて…)

ジネットはこの数ヶ月の胸のつかえがすーっと取れたような気がした。



(しわも綺麗になってるわ。
今度こそ、大切にしますからね。
本当にごめんなさい、ダニエルさん。)

微笑むダニエルの写真に心の中でそう呟き、ジネットはその写真を羊皮紙にくるんでバッグの中に大切にしまいこんだ。



(今度こそ…どうか、今度こそ、あなたの息子さんに会えますように…!)