イイコでしょ?

「お前何言ってっか分かって言ってんのか。」






「どうせ!!…どうせ、好きじゃねんだろ?だったらくれよ。俺は美希じゃねぇとダメなんだよ。」









「好きじゃねぇワケねぇだろ!」








かかった。



言えよ、素直に全部。









「俺は、お前なんかよりも……」








ほら早く。








「キスマーク一つで気が狂いそうな程嫉妬すんだよ。不安でしょうがねぇんだよ。」









怒気を帯びていた声が、だんだんと哀しみの色に変わっていく。









「俺は、お前なんかよりも…美希を愛してんだよ。」









それでいい。



それでいいんだよ。







掴まれていた胸ぐらにあった手が緩まり、両手でそっと離してやった。








「だってさ、美希。良かったなお前。すげぇ愛されてんじゃん。」







止めに入ろうとしていた美希が、俺の横で呆然と佇む。





嬉し過ぎて意識飛んじゃった?



俺の仕事はここまで。




後は夫婦の問題。






「んじゃ美希をよろしくお願いします。こいつ寂しいと直ぐ泣くんで、めんどくさいですけど、いっぱいかまってやって下さいね。」









カバンを手にする。




やけに重く感じるけど…




俺は歩を進める。




副社長なら大丈夫。




任せられる。




これで自分の気持ちにケリ着けられる。




かな。




諦め悪りいから、また時間かかるかもな。




振り向きもせずにひたすら歩く。













エレベーターに乗り込むと、あぁ…と低くため息をつき、そのまましゃがみ込んでしまった。





なにこれ。




泣いてんの?俺。




こんな、好きだったんだ。






「なっさけねぇ。男泣きかよ。だせ…」





熱くなる目頭を、奥歯を噛み締め必死に堪えた。





エレベーターのモーター音が虚しく響く。













しっかりしろ。



幸せを祈れ。






立ち上がる。




前を向いて、開いた扉から真っ直ぐに、





俺はまた、歩き始める。