イイコでしょ?

カタン……






二人しかいないオフィスに物音が響いた。






「…翔さん…」






美希の顔が不安気に歪む。





俺は振り返る事もせず、膝に乗った美希の手を握りしめた。





後ろからカツカツと低い靴の音が近付いて来る。





その音はピタリと俺の真後ろまで来て止まった。





「お疲れ様です。副社長。」






美希の細く長い指を見ながら言った。





「手を離せ。」





「いやだ、って言ったらどうします?」





「ふざけるな。」





確かめたい。





「ふざけてるつもりはありません。副社長こそ、誰でも良かったんなら、離婚して貰えませんか?」





確かめたいんだ。



この人の本音を。





「離婚?なんだよいきなり。お前に関係ねぇだろ。口挟むんじゃねぇ。」





「ちょっと翔さん!」





美希の震える声を制止するように、掴んだ手をぎゅっと強く握りしめた。





大丈夫、としっかりと目で伝えてやる。





「関係なくないよ。俺、美希を愛してるんで。いい加減な結婚なら返してください。」





「…なんだと?」





だんだんと、見えてくる。



美希、よく見とけ。



これがこの人の本音。



こんな挑発したら、俺は自分の首を絞めるだけ。



でも美希にはちゃんと見せてやんないと。



これで俺もきっと、諦めがつく。






「俺は美希を泣かせたりしない。幸せにしてやる自信もある。いいですよね。貰っちゃっても。」






俺がそう言い終わらない内に、勢いよく掴みかかって来た副社長。





胸ぐらをガシッと掴み上げ、凄まじい怒りが眉の辺りを這っているのを肌で感じる。





思った通り。