イイコでしょ?

「最近さぁ、親父が見合い見合いうるせぇんだよ。剛くん代わりにやってくんない?」





俺に合わせて喫煙所で缶コーヒーを啜る翔ちゃん。




タバコ吸わねぇのに、ほんと俺の事好きだな、なんて考える。





「見合いかぁ…俺らもそんな歳なんだなー。いんじゃね?見合い。一回やってみたら?」





適当に応えながらタバコをふかし、ぼんやりと部屋の外を眺める。





今の仕事の都合で出入りしているマーケティング部では、せかせかと動き回る一人の派遣社員の姿があった。





俺は知ってるよ。





翔ちゃんがタバコも吸わねぇのにここに居る事。





俺の事好きってのもあるけどさ。





ほんとはアレ、見てんだよね。





翔ちゃんの瞳には、いつもアノコが映ってる。

















「アレは?」




まるで、今日の晩飯を聞くように、素っ気ないそぶりで聞いてくる翔ちゃん。





顎で指した先に居たのは、いつも見つめるアノコで。





頑張って素っ気ない演技をしている翔ちゃんを、バカだな、と心で笑った。






「あぁ、あの子は確か最近入った派遣の子だよ。なに?気になっちゃう感じ?」





「いや、そう言うんじゃねぇよ。」






そう言って背中を向けて、またコーヒーを啜った。

















「名前、高橋美希ってんだって。」





タバコを咥えながら隣に居る翔ちゃんに、右掌を差し出す。






「…そう。美希。」





「ん。」





「ん?あぁ、はい。情報料。」






掌にトン、と乗せられた缶コーヒー。






何時の間にか喫煙所は、翔ちゃんに社員から貰った美希の情報を伝える場所になっていた。





俺が吐くタバコの煙をうっとおしそうに避けながら、見つめる先はやっぱり美希で。





こんないい男を虜にさせるなんて、美希も罪な女だな、とか考える。





俺には魅力がサッパリわかんねぇ、前にそう言うと、鬼の形相で見下された。





別に恐くもなんともねぇけど、そんな事でキレちゃう翔ちゃんが逆に可愛く見えた。