イイコでしょ?

4LDK新築マンション。





新婚の二人が住むには少し広すぎる。





仕事を終えた私が帰る家はココ。





仕事を終えた彼が帰る家もココ。





先日、式を終えた二人の帰る、新居。





式場に何度も二人、手を繋いで通い、この料理素敵!とか、引き出物はこの食器がいいんじゃない?とか。





ウエディングドレスを試着して、ハニカミながら登場したり、それを見た彼が、綺麗だよって、少し照れながら呟いたり。





そんな理想的な式なんか、一切ない。





大きな会社の社長の息子の晴れの舞台なのに、身内だけのごく少数でひっそりと行われた、まるで何かから隠れるように。





神父様に誓った愛の言葉は、中身のないハッタリだった。




こんな悲しい人生の再スタート、聞いたことない。















「あ…帰ってたの。」






「あ、はい。おかえりなさい。」






我慢しようとしたけど、ウズウズしちゃって玄関で出迎えたけど、不機嫌そうな顔は変わらず。





「ご飯は?」





「食って来た。もしかして作ったとか?」





顰めた顔がこちらを向いた。





言い方が若干トゲトゲしい。





「…作ってない。」





本当は作ったの。




別に食べて欲しいからとかじゃなくて、一応ね?




一応は妻なんだし…と思って。





仕事帰りにスーパー寄って、二人分の材料買って、買ったばかりのエプロン着けて。





ちょっと…鼻歌混じってたかも知れないけど。




それでも…





こうなる事なんて目に見えてた。





目に見えてたハズなのに、拒絶されるたびに、ナイフが胸に突き刺さる。





悔しくて悔しくて…





それでもやっぱり近くに成瀬さんを感じると、キライにはなれなくて。





この結婚だって、社員になりたいからなんかじゃなくて、成瀬さんのそばに居たいっていう邪心があったから。





「先、寝てていいのに。俺全部自分で出来るし。」






「別に待ってたワケじゃないんで!」





小さな抵抗。





いーーっ!と歯をむき出しにして、急いで自室へ閉じこもった。