イイコでしょ?

「今ね、丁度親父にガンガン見合い押し付けられてたんだよ。写真見たら吐き気がする程の女でさ…」





私、この人好きなんだよね?





あのキラキラと輝いていた横顔が、今はウンザリしたように顰めた顔で、女の子の悪口を叩く。






こんな人…だったの?





唖然として見つめる私。






構わず話し続ける副社長。





「あんなブスと結婚するなんて、いくら仕事の為とはいえ人生ゲロだよ。最悪…」






すごく素敵な笑顔で、清潔で、クールだけど周りには優しくて…





遠くから眺める彼は、いつもそんな感じだった。





違うの?





「あのちょっと…」






「要するに、お前は社員になりたい。俺はブスから逃げたい。

交換条件ね?これはあくまで『契約結婚』だ。お前が誰を好きでも構わない。だがお前は俺の妻になる。」





「えっとー、あれ?わかんない…それって誰でも良かったって事?」






首を傾げていると、キャッと小さく叫び声を上げたのは、彼の腕が伸びてきて不意に私の身体を包んだから。





視界が急に真っ暗になる。






高そうな香水の香りが鼻の奥を撫でる。





「いや、あのっ…やっ!」






慌てて離れようと、硬い胸を押し返すがビクともしない。






暴れる私の顎を右手でグッと掴み、睫毛が当たりそうなほど近づく顔。






何の抵抗も出来ないまま、そのまま乱暴に唇が押し付けられた。






「契約成立。」






薄笑いを浮かべ、口角の上がった綺麗な顔。






こんな乱暴にキスされたのに、私の胸はドキドキと鼓動が止まらないでいた。