イイコでしょ?

「ウソツキ。」





マンションの駐車場は広く、誰も入って来る気配はない。




冷たく吐き捨てられた言葉に、胸が苦しくなった。






「お前分かりやす過ぎてムカつく。何?昔好きだったとか?」





まっすぐ前を向く私に、唇が頬に触れるくらいの距離で、あざ笑うかのように言われた。





「だったらなんですか?昔の事です。」







好きなのに。


どうして?







「結婚してる奴が、昔好きだった奴と仲良く夜道を歩ける神経がわかんねえよ。バカか、お前。まだ好きなんだろ。」







好きなのに。


どうして?






「成瀬さんには関係ないでしょ!」





また言い合いになる。



私が止めなきゃ。



それなのに…






「結婚してるって言ったって、偽装なんだし。少なくともカズにぃは私をバカなんて言わない。」






「じゃあ行けば?あいつんとこ行けばいいだろ。」






「…分かりました。嫌いなんですよね。私の事…」







目には涙が溜まり、今にも零れ落ちそう。




その後すぐに流れ出てしまったのは、成瀬さんが唇で私の唇を塞いだから。




ほらまた…





刃物のように鋭く、火傷しそうな程痛い言葉を投げて来たと思えば、




こんなにも優しい、まるで壊れモノを扱うかのようにキスをして…





私の気持ち、知ってるクセに。




知ってるからこそだ。




心も身体も、




ついていけないよ。




ポロポロと、流れる涙。




胸の奥、痛いよ。







「…ヤダ。」






大好きなのに。


どうして?






「もうヤダ…結婚なんてしなきゃ良かった。大っ嫌い!」







こんなに苦しくなっちゃうくらい好きなのに。


どうして素直に言えないんだろう。







車から飛び出して、一目散に家へ帰ると、直ぐに自室に閉じこもり、一晩中涙を流した。