イイコでしょ?












「おはよう美希。」




「あ、あぁおはようカズにぃ。」





俯きながら挨拶を交わす私を不思議に思ったカズにぃが、下から覗き込むように肩に手を触れた。






「…目、腫れてる?」





「あのー、あの後家帰って録画してたドラマ見てね~、もうワンワン泣いちゃって…」





カズにぃが、悲しい顔をする。




悲しい顔をして私を見つめる。




そんな目で見ないで。




また…涙が出ちゃうよ。






唇をぎゅっと結んで、ニッと笑って見せるけど、そんな強がりはカズにぃの前ではなんの意味も持たない。





「何があった?」





「…別に?何もないよ?何言ってんのカズにぃ。」





背中を向けてそう言うと、ちょっと来い、と、突然手首を掴まれ引かれて行った。





廊下をズンズン進むカズにぃに、何も言えずにただ黙ってついていく。





涙を堪えきれそうになかったから。




カズにぃが、私を隠してくれると思ったから。




あったかいカズにぃの手を手首に感じ、反対の手で込み上げる冷たい涙を隠す。
















パタン…





反対側の壁がガラス張りになっている広い会議室は、朝の太陽の光が全面に入り眩しく室内を照らす。





カズにぃは私を椅子に座らせると、自分も向かい合うように椅子を移動させて座り込んだ。





「何があった?」





改めて聞くカズにぃの二度目の問いは、さっきよりも心配しているような…




昔にもこんな事あったな、なんて頭の隅で考える。





「別に心配するような事じゃないよ?」





「……」





カズにぃは黙って私の顔色を伺う。




私は視線を逸らし、平静を装う。





「変わってねぇな。」





「えっ?」





「美希はウソ付くと、ココがピクピクすんだよ。知ってた?」




そう言って自分の唇を指でトントン、と指した。




「何それ…知らないそんな事。」





「俺しか知らない美希の可愛いクセだよ。」





スッと椅子を転がし、距離を縮めると、伸ばした指先が私の唇を撫でた。





「言ってみ?カズにぃに。」





優しく微笑んだカズにぃの顔は、太陽の光に包まれて、白くとても綺麗に見えた。