イイコでしょ?

「どこ行ってたんだ!!」






怒りに満ちた声が、冷たい冷気と共に私に降りかかる。






成瀬さんがしゃがみ込んだ瞬間、殴られる、と思い、無意識に両手で頭を覆うと……






「……良かった。」






小さく屈んだ私の身体をギュッと抱きしめながら、漏れ出るように言った一言。





冷たい成瀬さんの手。





高いスーツやコートが、私から落ちる雫でポツポツと濡れて跡が出来る。






「成瀬…さん?」






名前を呼ぶと、腕の力が更に強く、痛い程に強く抱きしめられた。






「……居ろよ。」






「えっ?」






「居ろよここに。何で居ねえんだよ…」






僅かに震える声が、浴室に反響する。






「ごめ…んなさい。」






大きく息を吐いた成瀬さん…怒ってるの?





私を…探してたの?





でもそんな事聞けなくて、ただ黙って成瀬さんの冷たい腕に抱きしめられる。






開けっ放しのドアのおかげで、小さなクシャミを一つすると、それに気付いた成瀬さんが、


悪りい、と言って顔を伏せながら慌てて浴室を出て行った。





なん…だったんだろう。






とりあえずドアのカギをかけてから、冷えた身体をミルクのお湯でもう一度温め直した。