イイコでしょ?













「帰り乗っけて?」





ノックもせずにやって来た剛くんが、ポケットに両手を突っ込みながら言う。





ついでにガムまで噛んでいた。






書類に判を押す手を一度止めて、剛くんの方をチラリと目だけで見た。






「別にいいけど。亮は?」





「もういいよあいつは。」





「なに?ケンカでもした?」





「いいから早く帰るぞ。」






分かりやすくイラついた様子の剛くんは、早くしろ!と俺を追い立てる。





誰が上司で誰が送ってやんのか、この人には全く意味のない物なんだ。




やりかけの仕事を急遽持ち帰る事にし、美希にメールを送る。






『今から剛くん送って帰る。写』






送信したまま画面をジッと見つめる。





頭の中で一分数える。






58、59…






60秒丁度に、画面はパッと明るさを取り戻す。






『お疲れ様です♪今日はパエリアを作ってみました!待ってます♡』





可愛いメールと共に、パエリアと可愛い美希の写真が添付されていた。






俺のメールの最後にあった『写』の文字は、写真も送れという合図。






いつまでも写真を見ながら、薄く笑っていた俺の背中を剛くんが摘まんで、キモイ、早く。と言って急かした。






あぁ、早く帰って美希のパエリア食いてぇ。
















会社を出ようと二人でロビーを抜けると、中に居たから全く気づかなかったが、大粒の雨が地面を叩きつけながら降っていた。






一歩外に出るとひとたまりもない。






駐車場は地下にあるから濡れる心配はないけど。






前を歩いていた剛くんが立ち止まってボゥっと外を眺めていたのに気づく。





剛くんに近づき、その視線の先を辿ってみると…






「あれ…亮じゃねぇの?」





会社の前に数個並んだベンチの一つに、ずぶ濡れになった亮が座っているのが見えた。





「何してんの、迎えに来たんじゃねぇの?」





亮を見ながら剛くんに言うけど、剛くんはフン、とイラついた息を漏らすだけだった。