イイコでしょ?

私の名前を呼ぶ、愛しい人の声がする。





ふわふわとした手つきで頭のてっぺんからうなじまで、大きな手が包み込むように流れて行く。






そうだ…この声は翔さんの声だ。




この手は翔さんの手だ。






瞼を閉じたまま、感じる。





新井さんを見送った後、あのまま寝ちゃったんだ。






名前を三回呼ばれたところで、意識ははっきりと目覚める。





だけど、もうちょっとこうしていたくて寝たふりを続けてみたけど、






「ふふ」






幸せ過ぎて無理みたい。





瞼を開くとスーツのままの翔さんの胸板。






「おはようございます」






久しぶりに翔さんに触れて、それもホテルで二人…






赤くなってるのなんて私だけなんだろな。





恥ずかしさで顔は伏せたまま。





「おはよ。」





返事は素っ気なく聞こえるのに、優しい手はそのままで。





まだ怒ってるのかも、と、そっと目だけを動かし顔を伺ってみる。






久しぶりの翔さんにまだ慣れてないのに、そんな事するんじゃなかった。






至近距離で目が合うと、緊張で胸が痛い程苦しくなったから。






だから直ぐに目を伏せるのなんて自然現象で。





そんな私を見て、含んだように笑う翔さん。






「……無事で良かったよ。」





「あの…」





「ごめんなさいは聞き飽きたぞ。」





「じゃあ…ありがとうございました。」






「それでいい。」






そう言って、隙間の無いくらいに抱き寄せ私だけの特等席へと導いてくれる。






大きな窓から差し込む光のせいで、恥ずかしさに拍車がかかり、頭の中はもうグチャグチャ。






頭上から漏れる吐息が一つふりかかると、次の言葉で私の頭は更にグチャグチャになった。







「風呂行くぞ。昨日の罰だ。美希も一緒に入れ。」






「……っ?!」