イイコでしょ?













居る事も忘れてしまう程静かだったから、てっきり寝てるんだと思ってたけど…






「前にもあんた探すのに付き合わされた事あったなぁ。」






隣のベッドのシーツの隙間から聞こえて来る声は、どうも不機嫌だ。





「前にも?いつの事ですか?」






思い出すのがめんどくさい、と言いながらも、話してくれた新井さん。
















まだ、翔さんの気持ちを知らなかった時の話を。





初めて私と翔さんが会話をかわした時の話を。





計画的に、私と結婚するよう仕向けた時の話を。






迎えが来るまでの退屈しのぎに話してくれた新井さんの話は、どれもこれも翔さんの私への愛で溢れていた。





驚いたし、嬉しいし、何よりそんな翔さんがとても愛おしく思えた。





無意識に透明な涙が頬を伝って、翔さんの右手をぬらしていた。


















「俺はそんな事出来ねぇからなー。」




タバコを咥えながらジャケットを羽織り、帰る支度をしている新井さんが、少し眉を下げながら呟いた。




「あの!」





ん?と、そのままの顔をこちらに向ける。




「ありがとうございました…その、色々と。」




「んな事いーから、また餃子食わせろ」




「はい」




「色々と。」で、伝わったのかは分からないけど、新井さんはなんだか照れ臭そうな笑顔とタバコの煙を残して、部屋を出て行った。